オリエ
保護犬の里親になるには、いくつかクリアしなくてはいけない条件や手続きがあります。
今日は保護犬を迎えるにはどうすれば良いか、そして実際迎えてみてどうだったのか、グリアンとの4年間の生活を振り返ってお話ししますね。
里親募集サイトで条件に合った保護犬を探す
「保護犬」「東京」で検索するとたくさんの里親募集サイトがあります。
里親の飼育環境を確認するために、保護犬の受け渡しは保護団体の方が自宅まで直接届けに来ます。
保護犬を探すときは必ずお住いの地名を入れましょう。
オリエ
そこで我が家では、まず家族3人各々の希望や住宅事情などから出る条件を考慮して、お迎えしたい犬種を絞り込みました。
- 短毛(夫ハウスダストのアレルギーあり)
- 小型犬(当時住んでいたマンションは小型犬のみ飼育可)
- 小型犬の中でも大きい犬種(以前飼っていたのは大型犬だったので、小型犬の扱いに慣れていない)
- 活発(たくさんアウトドアに連れ出して遊びたい)
- フレンドリーな性格(娘がまだ小さかったから)
以上の条件に合う犬種をネットで検索して、ボストンテリアの女の子に決定!
それから暇さえあれば各里親募集サイトを巡り、ボストンテリアの女の子の里親募集が出ていないかチェックしていました。
そんなある夜、当時すでに日課のようになっていた里親募集サイト巡りをしていたら、ドッグレスキュークラブ・東京で可愛いボストンテリアの女の子を発見!!
年齢は推定6〜8歳。写真をクリックすると、ブリーダーの飼育放棄で引き取られて来たという経緯と、預かりさん(保護犬に里親が見つかるまで一時的に飼育をしてくれているボランティア)のところでの生活ぶりや、そこでわかった性格について書かれていました。
里親になるためのたくさんの条件
せっかく里親と出会えた保護犬が、また再度保護されてしまうようなことにならないように、保護犬の里親になるにはたくさんの条件があります。
飼育環境等
- 保護団体が車で搬送可能な範囲に住んでいる事
- 完全に室内飼育が可能なペット可の住宅である事(玄関先や庭での飼育は不可)
- 集合住宅の場合は、管理規約にペット可であると記載がある事(お見合いの際に管理規約のコピーを持参)
- 毎年の健康管理を必ずする事(狂犬病・ワクチン・フィラリア等)
- 保護中に健康チェック等で掛かった諸費用の一部を負担していただける事
その他検討が必要な条件
以下の場合は紹介を断られる可能性があります。
- 乳幼児がいる(衛生面・咬傷事故等の危険性)
- 小学低学年生のいる家庭(仔犬・犬種により要相談)
- フルタイム勤務や共働き等で長時間の留守番をさせる必要がある家庭(若犬の場合)
- 単身者(但し時間の融通がきく就労環境であれば、検討の余地あり)
- 親と同居の未婚・未成年の人は、原則として親に直接確認が必須
- 65歳以上の人が中心に犬の世話をする家庭(但し小型のシニア犬であれば、検討の余地あり)
- 近い将来出産の予定がある家庭(アレルギーの問題多々あり)
- 転勤の可能性のある家庭(移転先に連れて行かれず放棄多々あり)
- 婚約中の人(結婚後、一段落してから)
- 先住犬が未去勢・未避妊の家庭は要検討(犬同士のトラブル多々あり)
- 多頭飼育の家庭(基本先住犬2頭以下であれば可能)
オリエ
お申し込みから譲渡までの流れ
まずはアンケートに記入してエントリー
オリエ
でも、娘がまだ小学2年生だったため、このボストンテリアの女の子が子供が苦手ではない事を願いつつエントリー。
アンケートに回答します。
アンケートの内容は、住所氏名連絡先に加え、応募理由、家族構成、住まいについて、先住犬について、飼育する人の仕事について(1日どのくらいの時間在宅できるか)などが主な質問でした。
数日後、団体より待ちに待ったメールを受信。
預かりさんと私たちの日程を合わせてお見合いの日を決めてもらいます。
いよいよご対面!お見合いの日
オリエ
東京23区の西側で美容室をされている預かりさん。
お店に入ると人懐っこいミニチュアダックスフントと…オドオド、というよりはオロオロした感じの痩せたボストンテリアが!!
預かりさんのお宅では「ベティ」と名付けられ呼ばれていたグリアン。
6〜8歳と聞いてた割には痩せているせいか、ベビーフェイスだからか子犬のようにも見えました。
でも、乳首を見るとたくさん出産したことがわかります。
グリアンとふれあいつつ体の傷跡などを確認しながら、グリアンが保護されるまでどのような環境にいたのか、保護されてからどのようなケアを受けたのか、今の健康状態や今後も続けるべきケアについて、預かりさんから細かく話を聞きました。
それから、日が傾いて少し薄暗くなっていましたが、預かりさんのお店の周辺をぐるりと一周、グリアンと散歩してみました。
そこでお見合いは終了。
一旦帰宅し家族で話し合い、後日改めて保護団体に連絡してトライアルの日程を決める流れになります。
2週間のトライアル
オリエ
ペットショップで一目惚れした可愛い仔犬を家族に迎えてみたけれど、その後になって実は子供に犬アレルギーがあることが判明したり、先住動物と仲良く出来ず先住動物がストレスで弱ってしまったり…といった理由で保護団体に引き取りを依頼するケースがよくあるそうです。
保護犬の場合は、トライアルの2週間で保護犬と家族・先住動物との相性などを確認した上で正式に譲渡となり、後々大きなトラブルに悩むリスクが少なくなるよう配慮されています。
また、トライアル開始時に保護団体の方が保護犬を連れて自宅に来た際に、飼育環境を確認し、お世話の仕方を実地で教えてくれるのも、とても助かります。
オリエ
1.小学2年生の娘と仲良くできるか
2.犬を飼うのが初めてな夫も、犬との生活を楽しめるか
3.夫と娘に犬アレルギーがないか
…の3点でした。
- 犬種のサイズに見合った大きさのケージ(保護犬が家に慣れるまで、ケージに入れるのは必須です)
- ペットシーツ(トイレシート)
- ドッグフード、おやつ
- 餌用のお皿
- 水飲み用ウォーターノズル
- ペット用ウェットティッシュ
- お散歩用エチケットパック(うんち処理袋)
リードと首輪はお借りしました。
医療費の支払い
トライアル開始時に、保護した後にかかった医療費をお支払いします。
※トライアル後、譲渡不成立の場合は返金されます。
- 避妊・去勢手術
- 8種混合ワクチン
- 狂犬病予防接種
- フィラリア検査
- 検便検査(陽性の場合駆虫)
- 血液検査
- デンタルクリーニング料
- 保護センター引き出し料
- 搬送代(+有料道路往復使用料金)
- 協賛金
概算で3〜4万円程度となりますが、手術時の麻酔量で若干料金に違いが発生します。
仔犬の場合は譲渡後手術の為、預かり金(内金)として一部を支払い、実施後に精算します。
正式譲渡へ
オリエ
保護団体に譲渡の意思を電話で伝え、トライアル開始時に渡された譲渡同意書にサインをし、譲渡された犬が同居する家族全員と写っている写真を同封して郵送します。
同意書の内容はこのようになっています。
- 「譲渡された犬と終生、家族として生活を共にすることを約束します。」
- 以下の場合は必ず団体に連絡すること
■転居(引越し)等で、飼育環境が変わる場合
■逸走・迷子等で犬が行方不明になった場合
■譲渡された犬が死亡した場合
■やむを得ない理由によって、犬の飼育が困難になった場合 - 区(市)役所で登録後交付される「犬鑑札」と「狂犬病注射済票」の場号を記入
- 必ず首輪を装着し、「名札」または「狂犬病注射済票」を必ず外れないように取り付けること
- いかなる理由があっても、散歩時にリードを離さないこと
- 譲渡された犬を、団体に相談なく勝手に第三者に譲渡しないこと
- 犬の健康管理に気をつけ、毎年のワクチン、狂犬病、フィラリア予防他、健康面で不安が感じられる時には速やかに獣医に相談すること
オリエ
保護犬を迎えるということは、その犬の過去や心の傷も一緒に分け合うということ
オリエ
預かりさんも、引渡しに来てくださった団体の方も…お二人が実際どこまで知っているのかを聞き出すことはできませんでした。
ただ、団体のホームページで読んだグリアンの紹介文と、グリアンの体に残る傷と、預かりさんや団体の方から伺ったお話をまとめて考察すると、大体の様子は想像できます。
パピーミルでの暮らし
グリアンを見ると、まずはピンと立った大きな耳の先が両方ともガタガタに欠けているのが分かります。
これは体温が低下しすぎた為、耳の先が壊死してしまったからだそうです。
体長から算出するに8.5キロが理想体重と言われるグリアンの保護された時の体重は5キロほどしかなかったと聞きました。
いわゆる「パピーミル(子犬工場)」と言われる悪徳ブリーダーのところでは通常5歳までしか交配・出産をさせないところが多いようです。
5歳をすぎるとそれからは死なない程度に餌を与えて放置しているそうです。こうして保護団体に引き取って欲しいと連絡をしてくるだけまだ良心的な方だと、団体の方が言っていました。
保護された時、左目は化膿した傷がそのままにされていたため、治療後の今も真っ白に濁っています。おそらく左目はあまり見えていないようです。
お尻にはたくさんのハゲがあります。これは全て床ずれの跡だそうです。
そして、声帯を取られてしまっているため、一切声が出せません。グリアンと同じところから保護されてきた犬は皆、ミニチュアダックスフントもチワワも、声帯がないのだと団体の方が教えてくれました。
こうした状態から推察するに、おそらくグリアンは、身動きできないくらい小さなケージの中から交配と出産の時以外出してもらうこともなく、餌もあまりもらえず、傷の手当てもされず、吠えて訴えることもできずに、生まれてから保護されるまでの6〜7年間を生きてきたのだと思われます。
オリエ
保護犬を迎えるということは、その犬の過去や心の傷も一緒に分け合うことなのだと思います。
それは飼い主として最高の喜びでもあります。
実際一緒に暮らしてみてわかったこと
オリエ
どうしても出来ないことや苦手なことがあったりもします。
グリアンの場合、人間にいじめられた経験はないため人を怖がることはなかったのですが、可愛がられたり遊んでもらったりしたことはないため、人間は「餌をくれる何か」以上の存在ではなかったようで、うちに来たばかりの頃は全く人に興味を示しませんでした。
私たちが出かけて留守にしても帰ってきても意に介さないといった風に、こちらに目もくれず眠っているばかり。
抱きしめられたり、キスされたりするのは怖かったようで、私は眉間を、娘は唇を、顔を近づけた時に噛まれてしまいました。
なので最初のうちは可愛がりたい気持ちをぐっと堪え、こちらからも少し距離を置くようにしていました。
オリエ
自然に触れさせたくて海や山にも連れて行ってみましたが、どちらもとにかく怖がってばかりで全く喜んではもらえませんでした。
音が響くバスルームも、濡れることも、ドライヤーの音も、シャンプーにまつわる全てがストレスになるようなので、シャワーもNGです。幸い短毛なので、体は拭いてきれいにしています。
オリエ
飢えた経験があるので、食に対する執着はものすごいです。食糞癖もあります。
ただ、おやつさえ見せればどんな芸もすぐ覚えるという強みにもなっています!
現在の様子
グリアンがうちの子になって4年半。今ではすっかり甘えん坊です。
一日中家の中で私の後追いをして、かまってもらえるチャンスを伺っています。
吠えられないので、そっと近づいてきてふくらはぎをぺろぺろっと舐めて私を呼びます。
音がなるおもちゃを声の変わりに大切にしていて、インターホンがなると、おもちゃを一生懸命鳴らして来客だと知らせてくれます。
トイレをするときは「お母さん、私、今からトイレするからちゃんと見ていて、終わったらおやつくださいね」と呼びに来て、トイレシートで得意げにしています。
相変わらず外の音が苦手なので、お決まりの深夜の散歩コース以外には連れて行ってあげることができないのですが、それでもとても幸せそうです。
オリエ
グリアンが仔犬だった頃もまた可愛かったんだろうと思うと、一目見たかったなぁ…という思いが抑えきれず、ネットでグリアンに似た仔犬の写真を検索したこともありました。
そして現実問題、実年齢がわからないので後どのくらいこうして元気でいられるのかの見当がつかないのは、不安でもあります。
保護犬の里親になるメリット
劣悪な環境にいたり、虐待されたり、大好きな家族との別れを経験したり…心に傷を抱えた保護犬には、どうしてもできないことがあったりもします。
仔犬の頃から家族の愛に包まれて育った犬に比べると、非常に怖がりな犬が多いです。
ですが、必ず里親になった新しい家族の愛情に応えてくれます。
時間をかけて、少しずつ心を開いていく様子はとても愛おしいです。
オリエ
でも、仔犬からの飼育も保護犬の里親も、両方経験した私は「どちらも同じくらい愛おしいと思える」と自信を持って言えますよ。
そして、仔犬からの飼育に比べ、保護犬の里親になるにはこういったメリットもあります。
- 成犬、シニア犬が多いので、躾がされており落ち着いている場合が多い
- 病気の有無、治療にかかる手間や値段を理解した上で飼える
- トイレトレーニングができている場合が多い
- トライアル期間で実際一緒に暮らしてみてから決められる
ペットショップでの販売に関する海外での取り組み
近年、営利を目的として劣悪な環境で愛玩動物を大量に繁殖させているパピーミル(子犬工場)やキトンミル(子猫工場)に対する取り組みが各国で進められています。
アメリカ
アメリカ、カリフォルニア州全域で2019年1月1日より、商用に生産された犬、猫およびウサギのペットショップでの販売を禁止するという新法が施行されました。
この新法により、今後ペットショップで販売できる動物はアニマルシェルターや救助センターの保護された動物のみとなりました。
イギリス
イギリスでも2019年内に、ペットショップでの子犬や子猫の販売を禁止する新法が導入されると発表がありました。
オリエ
グリアンと私たち家族の経験が、保護犬の里親になろうと検討されているみなさんのお役に立てると嬉しいです。