ベテラン事故調査員が教える交通事故を起こさない(加害者にならない)為に守るべき4ヶ条

交通事故を起こさない

事故調査員

私は損保会社から依頼を受けて交通事故の事故原因や事故状況を調査する事故調査員という仕事に約30年携わっています。

その経験を元に「交通事故を起こさない(加害者にならない)為に守るべき4ヶ条」というものをまとめてみました。

実際に交通事故を起こす前から、あらためて自分自身に対して注意を促せる機会はあまり多くはありませんよね。

ですが、身近に聞いた事故の話をキッカケとして、交通事故で加害者にならない為の約束事を確認する方は少なからずおられます。

この記事がそういった方々のお役に立てば幸いです!

第1ヶ条:絶対に極端な脇見運転をしないこと

飲酒運転ほど警戒していないドライバーの方が多いですが、脇見運転も一瞬の判断ミスを引き起こし大事故につながってしまう可能性があります。

脇見運転が事故に繋がるケースは、主に、

  1. 景色に見とれてしまう
  2. 助手席等の同乗者との会話中に同乗者の顔を見ながら運転してしまう
  3. スマホ(携帯電話)を見てしまう
  4. スマホ(携帯電話)やタバコ、ライターを床に落として拾おうとしてしまう
  5. 蜂やハエ、小虫などが車内に侵入し、顔の近くを飛び回るのを払い除けようとして虫に気を取られてしまう
などによって前方不注視となってしまった時が多いです。

脇見運転1:運転中に赤いランプに見とれてしまったケース

脇見運転

事故調査員

上記1番目の「景色に見とれて脇見運転」してしまったケースです

ある県の地方都市に住み職場もその市内にある男性(Aさん)が、商談の為に県庁所在地の都市に車で日帰り出張することになりました。

Aさんが商談を済ませて帰途に就いた時は既に夜になっており、市内の中心部にあるインターチェンジから高速道路に入ったのは午後8時ころでした。

高速道路は高架式の都市高速道路(片側2車線)で、入ってすぐにビル群の間を通過して行きます。

Aさんは追い越し車線側を走行していた時に緩い左カーブに差し掛かり、そのカーブに気付かずに右側の擁壁に衝突してしまいました。

その際に、慌てて急ブレーキを踏み左側へ急ハンドルを切った為、車がスピンして2車線を塞ぐ形で横向きに停止してしまったのです。

そこへ後続の車(乗用車)2台が追突してしまいました。

幸いにも、この3台の車体は大きく破損したものの、各車の運転者や同乗者は首や腰の捻挫を負った程度で大きな怪我はありませんでした。

事故後の面談にて

事故後に私がAさんと面談して事故状況を確認したのですが、事故原因について尋ねたところ、

  • 高速道路の両側にたくさん建っている高層ビルの屋上や天辺で点滅している赤いランプの光に見とれてしまった
  • その為に脇見運転となってしまい道路のカーブに気付かず擁壁に衝突してしまった

との説明がありました。

高速道路は文字通り車が高速で走行しているので、1台が事故を起すと多重事故になりかねませんから脇見運転は絶対に禁止です。

この事故は夕方のラッシュアワーの後で通行量が少なかったから幸いでしたが、万一、日中もしくは朝夕のラッシュ時刻であったらもっと多重事故になっていた可能性もありました。

高速道路上で追突事故を起こした場合の過失割合

事故調査員

参考までに高速道路上で追突事故を起こした場合の過失割合について説明しておきます

まず、一般道路での追突事故は通常は追突した車が100%過失とされます。

高速道路の場合は、故障や事故で停止する場合は速やかに左側の路側帯に車を寄せてハザードランプを点灯させ、かつ三角板を置き後続車に存在を知らすべき義務があります。

Aさんの事故の場合は、この義務が実行されずに後続車が追突していますから、基本的にはAさんに40%の過失責任が課せられます。

さらに、この事故のように2車線とも塞いでしまった場合は後続車は回避しようがないので、Aさんの過失は基本から加算修正されて大きくなってしまいます。

ただし、後続車に車間距離の不保持や速度違反があった場合は、後続車も加算修正されるので双方の修正をプラスマイナス(相殺)して最終的な過失割合を出します。

脇見運転2:助手席の同乗者との会話中に顔を見ながら運転した為に前方不注視

事故調査員

上記2番目の「会話する時に同乗者の方を見て」しまったケースです

Bさんが夏休みに入って実家に車で帰郷することになり、仲が良かった友人を誘って帰省することになりました。

ところが、助手席に座った友人との会話に夢中になり前方不注意となり、運転を誤り路側のガードレールに猛速で左前の角部から突っ込んで大破させてしまいました。

運転中の会話は相手の顔を見なくても無礼ではありません

通常の会話の場合、相手の目または顔を見ながら喋るのが礼儀です。

ですが運転中でもそれを行うと、その間は前方不注視になってしまいます。

なので運転中は無礼だとは思わずに、絶対に顔を横や後ろには向けずに前を見たままで会話して下さい。

私も助手席に同乗していて私の顔を見ながら喋る運転者に時々出会うことがありますが、仕事柄もあり「こちらを見ずに前を注視して下さい。」と注意します。

なかにはムッとした表情を見せる人もいますが、運転者の気を害したとしても安全運転が絶対に優先です。

あなたが同乗者の立場になった時は、そういった傾向にあるドライバーの方がいましたら理由とともに危険性を共有してあげてください。

第2ヶ条:飲酒したら絶対に運転しないこと

事故調査員

飲酒運転はご自身が加害者にならない為に最も注意すべきことです。

飲酒運転による交通事故はたくさんの事例がありますが、「行方不明になり原因もわからない事態になったケース」をお話させていただきます。

事故によって行方不明にもなりうる

地方田園都市での事故で、男性(Cさん)が自家用車での帰宅途中で行方不明になるという事件がありました。

Cさんの奥さんから保険会社へ保険金の請求があり、その際に保険担当者が奥さんから事情聴取した内容は以下の通り。

  • 当時Cさんは同市内で居酒屋を営んでおり、自宅と店の通勤には保険契約していた小型乗用車を使用
  • 店は深夜まで営業しており、ある冬の日にCさんが帰宅時刻になっても帰宅しなかった
  • 心配した奥さんが心当たりに電話をしてみたのですが行方はまったく分からなかった
  • Cさんは無断で外泊する人ではなかった

明るくなってから奥さんが所轄の警察に捜索願いを出すと共に、自身でも近郊の山道や河川道路などを探してみましたが発見できませんでした。

行方不明になって1週間後、奥さんが市内の道路沿いにある大きな溜め池の金編フェンスの下部に大きな穴が開いているのを発見。

Cさんが運転を誤ってこのフェンスを突き破って池に転落した可能性を疑いました。

この池は水深が深い為、道路からは水中の車の影は全く見えないので、奥さんは警察に水中の捜索を要請しました。

フェンス穴の手前にはタイヤスリップ痕は残されておらず、当初警察はフェンス穴については通行車の当て逃げによるものと判断していた為に水中捜査には消極的でしたが、最終的には奥さんの要請に応じて水中捜査を行いました。

結果、奥さんの予測通りにCさんの車が発見されたのです。

司法解剖により飲酒運転による居眠り

私が現場確認後に所轄警察署の交通事故係を訪問して、担当官に以下のように確認しました。

「遺体は司法解剖したのですか?血液からアルコールは検出されたのですか?」

すると「解剖した結果は溺死でアルコールが検出された。」との説明がありました。

続けて「事故原因は飲酒運転あるいは飲酒による居眠り運転ですか?」と尋ねたところ「その可能性が大きい。」との回答でした。

飲酒運転は絶対に止めよう

このように飲酒運転は悲惨な事故に繋がるケースが多いので、絶対に飲酒運転は止めてください。

車で出掛けて、たまたま飲酒してしまった場合は車には乗って帰らず、タクシーで帰宅するか、最近では地方都市でも運転代行会社が出来ているようですから、代行運転を依頼しましょう。

ぜひそういう習慣を身に付けるようにしてください。

第3ヶ条:副作用のある薬物を服用したら運転しないこと

事故調査員

風邪薬には睡眠薬成分が含まれている為に服用した場合は車の運転は控えるようにとの注意書きはよく目にしますよね。

ですが糖尿病を患っている方も、治療薬を服用している場合には運転時に意識障害が出る可能性があるので要注意です。

低血糖症状が初めて出たケース

地方都市に住む女性(Dさん)から保険会社へ「今日、歩道の縁石とガードレールに接触する自損事故を起してしまいました。」との事故報告がありました。

ですが、事故状況や物損害の程度がはっきりしないので保険担当者から私へ調査依頼がありました。

Dさんから事故報告があった2日後に、Dさんから事故状況を確認したところ以下のような説明でした。

  • 糖尿病の治療を受けており、総合病院で定期的に診察と血液検査を受けて治療薬を処方してもらっている
  • 効き目が強すぎる薬を処方されていた
  • 車に乗り込んだところまで覚えているがその後のことが記憶にない

その後、気が付いた時は、警察官に運転席の窓ガラスを叩かれて「大丈夫ですか?」と声を掛けられた時とのこと。

その警察官はミニパトカーで巡回中にノロノロ運転している車を発見し、不審を感じたので追跡して停止させようとしたところ縁石に接触して止まったのだそうです。

低血糖症状について

事故調査員である私が「お話しから判断すると、Dさんが無意識運転してしまったのは低血糖症状が出たようです」と説明しました。

「低血糖症状については主治医からの注意を聞いていますよね?」と尋ねたところ、Dさんは「聞いたかもしれませんが覚えていません。低血糖症状って何ですか?」という回答でした。

たまたま身内に糖尿病患者がおり知識があったので、私からDさんに説明をしてあげました。

低血糖症状とは
血糖値を下げる為の治療薬の効き目が強すぎたり、また体調などに因って血糖値が下がりすぎることを低血糖症状と言います。

低血糖症になると脳への糖質の供給が低下するので、意識障害などを発症する場合があり最悪の場合は昏睡、昏倒して死に至る場合もあります

おそらくDさんには効き目が強い薬が処方されていた為に、それが原因で低血糖症状が出てしまったと思われます。

また昼食前で空腹だったことも関係していると思います。

糖尿病治療以外の副作用のある薬剤

低血糖以外にも、眠気、めまい、意識消失などの副作用がある薬剤は、

  • 風邪薬
  • 花粉症治療薬(抗アレルギー薬)
  • 鎮痛剤
  • 咳止め薬
などかなりの種類があります。

これらの薬の使用中は、自動車運転はもちろん危険を伴う機械の操作や高所作業などにも十分注意が必要となります。

余談ですが、本件のDさんがどれくらい意識がないまま運転していたかというと、約15km(30分)でした。

その間、何箇所かの交差点があるのですが、赤信号に引っ掛かった交差点もあった筈で、意識がなくても日ごろの運転習慣が本能的に出て赤信号では停止したのであろうと推察されます。

第4ヶ条:睡眠不足だったり疲れていたら運転しないこと

特に運転免許を取り立ての頃は体力的に無理をしてでも、ひとりもしくは仲間内でドライブに行かれることもあると思います。

事故調査員

例えば仕事の後、深夜にドライブに行く時などは、ご自身の体調と相談して特にご注意ください。

深夜ドライブ中に居眠り運転

Eさんはアルバイトの後、深夜のドライブに出掛けて居眠り運転による事故を起こしてしまいました。

睡眠を取ってから日中にドライブすれば良かったのだと思いますが、免許取り立てあったことから夜中に運転の練習をしたかったのだと思います。

また運転に段々馴れてくると夜中の方がスピードも出せるし爽快さを感じるようになったのでしょう。

普段は起きていられる場合でも体調や疲労度によって、居眠り運転につながってしまうこともあるので、仕事の後など疲れている状態(深夜などの遅い時間)はなるべく運転は見合わせるようにしてください。

事故調査員

事故調査員として交通事故を起こして加害者にならない為に、特に守って欲しい点を4つあげました。

あらためて運転時の約束事を確認したい方の参考になれば幸いです!